年末によい読書をした。子供向けの本だが、
音楽家の伝記 はじめに読む1冊 ベートーヴェン ひのまどか著
である。
私にとってはベートーヴェンはずっと不可解な作曲家であった。
やけに大げさな、強音と弱音が錯綜する突然の変化の連続についていけなかったのである。
しかし今回、この本のおかげでベートーヴェンの正体がやっと理解できたように思った。
世には『楽聖』なんて言われているが、ちょっとしたことでキレやすい、熱血漢。パトロンの貴族たちの中にはベートーヴェンを支えることで病気になった人もいたらしい。
なんだかんだこういう人は一昔前の関西に割といらっしゃった。いやいや関西だけでなく世界中で今でもいらっしゃる気がする…。
その現実世界でのいざこざから生み出されるエネルギーを、もともと生命力の強い人が、圧倒的な能力と努力で音楽に昇華した…それがベートーヴェンである。
第九などは演奏開始から50分近く経ったときにバリトンが歌いだす。
ああ、友よ、この音楽ではない
そうではなくて、心地よく喜びに満ちた歌を始めよう
50分聴かされて、そこでこの全否定である。全く空気が読めないようで、ここまできたら、ある意味あっぱれと言える。
詩人シラーの歌詞だが、この状況で出てくるのはシラーでも仰天するのではないか。
しかし、何にしろなかなかの名著だと思う。
はじめてベートーヴェンをウチの死んだおじいちゃんのように身近に感じた。